SATO YAMA UMI プロジェクト特別企画


SDGsユースサミット2019レポート

2:VOICE of TAIKI KIDO

VOICE of TAIKI KIDO

「個人の立場から、環境と向き合える存在になりたい」

−城戸大樹−

■私の動機

僕は大学で獣医学を学び、卒業して社会人3年目の獣医師です。僕自身は、人と動物、環境がどうやって良い関係を保つことができるかということに関心があり、学生の頃から、猿や鹿、あるいは、熊といった動物が、猟師や農家といった地域との関わりのなかで生じる問題について取り組んできました。

今回のインターンではニューカレドニアに派遣していただきましたが、その前は、JICAの青年海外協力隊として東ティモールのプロジェクトにも参加しました。東ティモールではマングローブの植林を中心とした活動で、今回のニューカレドニアではマンタの生態調査を通じた海洋保全プロジェクトに参加させていただきました。マンタは、その生態については殆ど解明されていません。そんなマンタの調査ということで、インターンとしての1ヶ月間のうち20日間は海上か海中に潜っていました。船でマンタが生息していそうな海域のあたりをつけて、ひたすら素潜りを繰り返します。もう息切れするくらい探しまわって、それでも見つからないときは、船に括り付けた紐で引きずられて探すわけです。そんな過酷なフィールド調査をしながら、その海の美しさに気づきました。そうした環境や動物と僕自身が獣医師という立場から向き合える存在になりたくて、いま獣医療を学びながら修業をしています。

■私の提言

「社会課題を、自分の問題として落とし込む感覚を養う」

この先の未来を考える時に、環境やSDGsなどは大きな社会課題ですよね。でも、そんななかで僕自身は、それを社会の問題としてではなく、自分の問題として落とし込むことが一番大切だと思っています。

ひとつ紹介したいのは、ホセ・ムヒカというウルグアイの大統領は「世界一貧しい大統領」というキャッチフレーズで有名な方なのですが、彼は「環境問題は経済問題である」と言っています。スピーチのなかで、あなたは何のために働くのですか? お金のために働くことが幸せですか? といったようなことを問いかけています。そこで僕が思ったことは例えば、コンビニは使わないとか、ペットボトルの商品は買わないとか、「消費」は自分で変えられるということでした。パームオイルの問題にしても、自分が知らないところで買わされているものとか、使わせられているものとかが沢山あって、それらが深刻な環境破壊に繋がっていることがある。そんなことを僕自身もフィールドで実感していますし、その感覚を自覚し、お風呂の水を減らすとか、エアコンの設定温度に気を配るといったことを実践して発信していければいいのかなと思います。

■大切だと思うことを、一生懸命取り組む

今回のニューカレドニアでのインターンでは、僕よりひとつしか歳が変わらないスタッフがいて、彼はマンタ・イニシアティブのニューカレドニア代表なのですが、マンタの保全活動を行う唯一のニューカレドニア人です。彼は自国にとって良いことをしたいと思い、何をすべきかと考えた時にマンタに関わる仕事をしようと決心したんだそうです。ニューカレドニアでは、マンタはビールのラベルに使われたり空港のキャラクターだったり、国を象徴する生物なんですね。そして、マンタ・イニシアティブの本部にコンタクトを取って相談したことが出発点で、アドバイスを受けて、まずは大学院に入ってマンタの学術的な知識を学び、そして、ニューカレドニアの代表に任命されたんだそうです。

それはすごいことだなと思ったので、彼にそう伝えたんですね。そうしたら、いや全然すごくないよと。自分が好きで、大切だと思っていることだから一生懸命やっているだけだと言うんですね。彼にとって、このマンタに係わる仕事が、自分事としてきちんと落ちている。このことがとても印象に残っています。僕もそう在りたい。獣医師という立場から、動物たちが言えないことを、僕が仲介して彼らのために何かしてあげたいなという思いは強くあります。

TOPへ